薄毛治療の最前線:『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン』って何?

AGA脱毛症薄毛

はじめに

男性型脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)は思春期以降に発症する進行性の脱毛症です。脱毛自体は、生理的な現象であるものの、外見上の印象を大きく左右するものであることから、QOL(Quality of life)にも影響を与えるものとして、積極的に治療方法が模索されてきました。そのような認識のもとでAGAの治療については、新たな内服薬・赤色LEDや低出力レーザーなどによる光治療、再生医療・細胞医療などが模索されています。

日本におけるAGAの治療は、日本皮膚科学会が2010年に策定した『男性型脱毛症診療ガイドライン』によって科学的根拠に基づいた治療方法が紹介されていました。しかし、2010年以降、新しい治療薬や治療手段が登場したことで内容がいささか古くなったことから、2017年に『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン』(以下ガイドライン)として改定されました。

この記事では、日本における薄毛の最先端治療について書かれたガイドラインについてわかりやすく解説することによって、AGA治療の最前線の概要を説明していきます。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインとは?

 『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン』は、科学的根拠に基づいた情報を選び出し、医師・患者双方にとって標準的と言える治療方法を提示することを目的に公表されたガイドラインです。この文書の中には、薄毛治療の最先端とも言える治療薬や治療方法がどれだけの効果があるのかについて、科学的根拠とともに示されています。

 2010年に『男性型脱毛症診療ガイドライン』が公表された後も、皮膚科医の立場からすれば無効であると考えられるような民間療法がなされ、無効な治療を漫然と続けている患者さんも少なくありませんでした。そこで、日本皮膚科学会は、このガイドラインを通じて、医学的な根拠に基づいた治療方法の評価を行うことで、薄毛治療に効果が認められる治療方法を明らかにしました。

 そのため、このガイドラインで評価されている治療方法は科学的に効果がある、もしくは効果がないと認められたものであり、医学的な根拠に基づいた信頼性の高いものであると言えます。

 薄毛治療に効果的な治療方法

 日本皮膚科学会が公表したガイドラインによれば、薄毛治療に効果的な治療薬・治療方法は以下の図の通りであるとされています。

(日本皮膚科学会ガイドライン: p.2766)https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

 CQ(clinical quetion)として、14個の治療薬および治療方法が挙げられ、その推奨度が明らかとされています。分析の結果、薄毛治療の治療薬として、フィナステリドの内服、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用がAGA治療に有効であることが明らかとされている一方で、ミノキシジルの内服にはあまり効果が認められなかったことが示されています。AGAの治療では、フィナステリドを主成分とするプロペシアが利用されることが多いため、以下では、プロペシアについてのみ簡単に解説していきましょう。

 フィナステリドはAGAの治療薬であるプロペシアの主成分として実際に活用されており、AGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成と関わりのある5αリダクターゼ(5α還元酵素)の働きを阻害する働きがあります。ここで、5αリダクターゼとは、男性ホルモンをジヒドロテストステロンに変換する酵素で、毛髪の生育に大きく関わっている毛乳頭細胞にあるレセプター(受容器)と結びついて、ヘアサイクルを乱し、髪が抜けやすくする働きをしています。フィナステリドは、この5αリダクターゼの働きを阻害することで、AGAの原因となるDHTの生成を抑制します。これによって、ヘアサイクルの正常化を促進し、髪の生育を維持する効果があると言われています。

おわりに

 AGAの治療は日々進化しています。その一方で依然として医学的には効果がないとされる民間療法を漫然と続けている人もいます。薄毛を治療するためには、医学的に根拠のある治療方法によって正しい治療をしなければなりません。AGA治療には、専門医に相談することが大切ですが、まずは自分でAGAの治療についてきちんと理解することが大切です。ガイドラインはそのための手がかりを提供してくれるので、薄毛に悩んでいる過多は必ず目を通しておきましょう。

 

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